人工甘味料は太るの?太らないの?
こんにちは、おっちーです(^^)
糖質オフ!カロリーゼロ!!
ダイエット食品に並ぶパワーワード。
これらの言葉を支えているのが人工甘味料です。
人工甘味料は、カロリーがほぼゼロのため、さまざまなダイエット食品に使用されています。
トレーニーの愛用品であるプロテインにも人工甘味料がたくさん使われています♪
ダイエットの強い味方と思われるこの人工甘味料。
しかし、あるところでは「人工甘味料は太る!」という声も上がっています。
果たして、人工甘味料は本当に太るのでしょうか?
それとも、太らないのでしょうか?
そこで、今回のテーマは人工甘味料は太るのか?太らないのか?問題について考察していきます。
この「人工甘味料は太るのか?太らないのか?問題」をハッキリさせるために、論文を12本熟読しました。
徹底的にインプットしたので記事の質には自信があります!
この記事では、
- 人工甘味料は「なぜ太らないのか?」基本的なお話
- 人工甘味料は「なぜ太るのか?」3つの説
- 人工甘味料は太るのか?実際の研究事例
について詳しく解説しています。
これを読めば、あなたは人工甘味料が太るのか?太らないのか?本当のところがわかることでしょう。
それではいってみましょう!(๑•̀ㅂ•́)و✧
人工甘味料は太る?太らない?
人工甘味料は太るのでしょうか?それとも太らないのでしょうか?
結論から申し上げると、
”人工甘味料は砂糖から置き換えれば太らない、それ以外は太る可能性あり”
です。
人工甘味料は、砂糖に比べて危険性が低くどうしても甘いものがやめられないのであれば選択肢として入れるのはアリだと思います。
※しかし、最近では人工甘味料のリスクも見られるので慎重である必要はあります。詳しくは次回以降で解説します。
なぜなら、人工甘味料には、
- カロリーがほぼゼロ
- 砂糖のように中毒や依存症にならず過食を防ぐ
といったメリットがあるからです。
しかし、人工甘味料で太るとする説もあり、
- ホルモンが作用して太る
- 甘いものへの欲が高まって太る
- 腸内細菌が乱れて太る
といったところが気になるところ。
基本的に人工甘味料で太ることはないと思います。
しかし、上記の説は無視できないため、手放しに人工甘味料を進めることはできません。
人工甘味料はなぜ太らないのか?基本的なお話
人工甘味料が太らない理由として、
- カロリーがほぼゼロ
- 血糖値が上昇しない
- 砂糖のように中毒や依存症にならず過食を防ぐ
があげられます。
詳しくみていきましょう。
人工甘味料はカロリーがほぼゼロ
そもそも、人工甘味料ってなんなのでしょうか?
代表的な人工甘味料としてアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリンがあげられます。
アスパルテームやアセスルファムカリウム、サッカリンは砂糖の200倍の甘みを持ち、スクラロースは600倍の甘みを持ちます。
そして、カロリーは砂糖に比べてほぼゼロであり、その優れた甘味と低エネルギーの特性から砂糖の置き換え食品として人気が高まりました。
この低エネルギーの特性により、人工甘味料は、
- 体重が減少し肥満を予防する
効果が期待されています。
安全性もFDA(米国食品医薬品局)、EFSA(欧州食品安全機関)、日本では厚生労働省など公衆衛生機関によって承認されていることから担保されています。
※しかし、最近では人工甘味料のリスクも見られるので慎重である必要はあります。詳しくは次回以降で解説します。
このことから、最近はダイエット目的で
- ダイエット・コーラなどの炭酸飲料
- ココアやカフェオレの粉末飲料
- サワー系のお酒
- ノンシュガーチョコレート
- のど飴
- ガム
- ゼリー
- ヨーグルト
- プロテイン
など、非常に多岐にわたり人工甘味料が使用されています。
※カロリーゼロやカロリーオフと書かれた商品は、人工甘味料が使われているのがほとんどです。
参考:アスパルテームを使用した商品のL-フェニルアラニン含量について(※)
なんだかんだいって、カロリーがおさえられれば太ることはありません。
人工甘味料は血糖値を上昇させない
人工甘味料は、血糖値を上昇させません。
血糖値が上昇すると、人は太ります。
なぜ、血糖値が上昇すると太るのか?
それを理解するために、まずは糖代謝について知っておかなければなりません。
糖代謝とは、人が生きていくうえで必要なエネルギーを獲得するためのカラダのメカニズムのこと。
人は食事で糖質を摂ると、
- 血液中の糖が上昇(血糖値の上昇)
- 膵臓からインスリンが分泌
- インスリンが筋肉や肝臓、脂肪細胞など各臓器の細胞に糖を取り込む
- 細胞に糖が取り込まれることで血糖値が下がる
- 細胞に取り込まれた糖はエネルギーに変換される
といった流れでエネルギーを獲得しています。
※糖=グルコース(ブドウ糖)
上記の①〜⑤の流れが糖代謝です。
このように、人は血液中の糖からエネルギーを獲得しています。
で、余った血液中の糖は、
- インスリンによって筋肉や肝臓でグリコーゲンとして貯蔵される
- さらに余った血液中の糖は、インスリンによって脂肪細胞に中性脂肪として貯蔵される
といった流れで最終的に脂肪(中性脂肪)となります。
※血液中の糖=血糖
中性脂肪が蓄積されればされるほど、人は肥満になります。
※よく、インスリンは太るホルモンと呼ばれますが、血液中の糖が余ってなければ脂肪になりません。よって、太る原因は血液中の糖が余っているからであり、インスリンではありません。
砂糖が太るのは、血糖値を上昇させるために最終的に余った糖がインスリンによって脂肪に変換されるからです。
その点、人工甘味料は砂糖のように血糖値を上昇させません。
このことから、人工甘味料は肥満を防ぐといわれています。
人工甘味料は砂糖のように中毒や依存症にならず過食を防ぐ
砂糖は、お菓子やデザートによく使われる甘味を与える調味料です。
主成分はショ糖(スクロース)と呼ばれ、グルコース(ブドウ糖)と果糖で構成されています。
砂糖の甘みは、人に快楽や心地よさをもたらすため喜びを与えてくれます。
これを専門的に解説すると、砂糖の甘味は脳の「報酬系」を刺激してドーパミンが分泌されることで快楽が得られるというもの。
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砂糖による報酬系の刺激は、麻薬で刺激された作用と同じで依存症や中毒につながります。
もし、中毒になると過食が続きカロリーオーバーとなって太る。
また、砂糖の過剰摂取は、肥満やメタボリックシンドローム、心血管疾患、2型糖尿病など健康に悪影響を与え問題になっています。
人はなぜ甘いものを求めるのか?
それは、甘いグルコース(ブドウ糖)を摂取することでエネルギー通貨のATPを獲得するため。
ATP(アデノシン三リン酸)は生きるために必須のエネルギーなのです。
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グルコース(ブドウ糖)は、砂糖を構成する成分。
生きるためにグルコース(ブドウ糖)は必須で、人が甘さを求めるのは本能に刻まれているのです。
だから、人は甘いものを求め続けます。
しかし、際限なく甘いものが得られる場合、人はカロリーオーバーとなって太ります。
その点、人工甘味料はグルコース(ブドウ糖)を含みません。
よって、砂糖のように甘みを求め続ける中毒症状から避けることができます。
これらの
- 砂糖はカロリーが高い
- 砂糖は血糖値を上昇させる
- 砂糖は依存症や中毒により過食につながる
といった砂糖の問題を人工甘味料は解決するから太らないのです。
人工甘味料は太る?3つの説を考察する
人工甘味料は、その低エネルギーの特長により肥満から開放されることが期待されています。
しかし、一方で人工甘味料は太るという説があるのも事実。
その理由に、
- ホルモンが作用して太る
- 甘いものへの欲が高まって太る
- 腸内細菌が乱れて太る
といったことがあげられます。
はたしてこれらは本当なのか?
詳しく考察していきます。
人工甘味料が太る説1:ホルモンが作用して太る
人工甘味料は、ホルモンが作用して太ると言われています。
その主な原因とされるのがインスリン。
インスリンは、食後に上昇した血糖値を下げるホルモンです。
血糖値を下げる他、インスリンは血液中に余った糖を脂肪に合成し蓄えます。
また、脂肪が分解されるのを防ぐといった働きもあります。
このことから、インスリンは肥満ホルモンと呼ばれることがあります。
下記の研究では、人工甘味料のサッカリンが含まれた液体でうがいをして吐き出させても、血液中のインスリン濃度が高まったようです。
参考:人工甘味料の使用は糖尿病患者にとって有益か?人工甘味料の長所と短所について(2022年10月)
絶食した健康なヒトを対象に、8種類の味覚液(スクロース、サッカリン、酢酸、塩化ナトリウム、塩酸キニーネ、蒸留水、デンプン、グルタミン酸ナトリウム)で45秒間口を洗い、吐き出させる研究が行われた。
味覚刺激は飲み込まないようにし、それぞれ別の日にランダムな順序で適用した。
血漿グルコースおよび血漿インスリン濃度測定のための採血は、味覚刺激の3分前および3、5、7、10分後に実施した。
スクロース(砂糖)とサッカリン(人工甘味料)による刺激後、血漿インスリン濃度の有意な上昇が認められた。
サッカリンのみが頭相のインスリン応答を刺激した。
※頭相のインスリン応答とは、舌で甘みを感じただけでインスリンが分泌されるという反応のことです。
これを見ると、どうやら人工甘味料はインスリンを分泌する作用があるようです。
よって、「人工甘味料はインスリンを分泌するから太るのだ」という言説があるのもうなずけます。
しかし、インスリンの働きは多様です。
インスリンには、
- 筋肉でたんぱく質を作る
- 食欲をおさえる
といった働きもあります。
筋肉でたんぱく質が作られるということは、筋肉が増えるということです。
筋肉が増えれば基礎代謝が上がり、エネルギー消費が上昇することで痩せやすくなります。
そして、食欲がおさえれられれば摂取カロリーが減少し、これも痩せることにつながります。
※また、血液中の糖が余ってなければ脂肪になりません。太る原因は血液中の糖が余っているからであり、インスリンではありません。
ひとえに「インスリンは肥満ホルモンだ!」と言い切ることはできないと思います。
インスリンって本当に太るの? こんにちは、おっちーです。 インスリンは、ダイエット界隈では太るホルモンと言われています。※特に糖質制限ダイエットではこのインスリンが太る原因として扱[…]
さらに、専門家のパネルディスカッションでは、人工甘味料はインスリンレベルに悪影響を及ぼさないと結論づけられています。
参考:低カロリー甘味料に関する専門家のコンセンサス:事実、研究ギャップ、提案された行動(2020年6月)
人工甘味料は、糖尿病の有無にかかわらず、血糖値およびインスリン調節(HbA1c、空腹時および食後のグルコースおよびインスリンレベル)に悪影響を及ぼさないという結論を支持するエビデンスが集約されている。
この話によれば、いくらインスリンが分泌されたとしても、砂糖ほどインスリンレベルを狂わすほどでもないということです。
よって、人工甘味料でインスリンが分泌されたとしても太らないというのが僕の結論です。
ホルモンが作用して太る説はちょっと難しいのでは?と思います。
人工甘味料が太る説2:甘いものへの欲が高まって太る
人工甘味料は、甘いものへの欲が高まるという説があります。
人工甘味料は強力な甘味を持つため、これに慣れてしまうとより強い甘味を求めるため過食につながり太るというわけです。
例えば、以前はコーヒーにパルスイート(アスパルテーム)1つで済んでいたのが、次第に2つ3つと増えていく。
これは経験上、なんとなく理解できるお話です。
はたして、この説は本当なのでしょうか?
ポイントとなるのが脳の報酬系です。
砂糖は、脳の報酬系を刺激します。
報酬系が刺激されるとドーパミンが分泌されて快楽が得られます。
適切な快楽であれば、「やった!嬉しい!もっとがんばるぞ!」といったポジティブな感情を呼び起こします。
ドーパミンは、喜びとともに非常にやる気に満ち溢れるホルモンです。
しかし、快楽に溺れてしまうと「もっともっと」と中毒になり食べすぎに走ってしまい太ることに。
あ〜!これを食べたら太ってしまう!!でも、とめられない!!これ以上食べると太るのに!!もうお腹いっぱい、でもとまらない、やめられない!!なんで?わたしの食欲はとまってくれないの!? […]
その点、人工甘味料は脳の報酬系をあまり刺激しません。
もし、「甘いものがやめられないとまらない」といった状態なら砂糖から人工甘味料に置き換えることは意味があると思います。
しかし、特に「甘いものがやめられないとまらない」状態でなければ、あまり人工甘味料に意味はありません。
なぜなら、逆に脳の報酬系を刺激しなさすぎるのも問題があるからです。
脳の報酬系が刺激されないと、快楽は得られず満足することができません。
すると、満足したいがために甘いものを求め過食に走り太るということになってしまいます。
よって、人工甘味料は甘いものへの渇望感を生み、過食に走らせ太る可能性があるということです。
参考:人工甘味料の使用が甘味の知覚と減量効果に及ぼす影響。総説(2022年3月)
このことから、甘いものへの欲が高まって太る説は根拠があると思います。
参考:”ダイエット “で太る?人工甘味料と砂糖欲求の神経生物学。ニューロサイエンス 2010(2010年6月)
カロリー含有量から切り離された甘味は、食物報酬経路の完全な活性化ではなく、部分的な活性化をもたらす。
完全な満足が得られないと、おそらく投稿的要素が活性化されないために、さらに食物を求める行動が加速される。
報酬反応の減退は肥満の原因となる。
人工甘味料は、まさに甘いという理由で、砂糖への渇望と砂糖依存を助長する。
繰り返しの暴露は、味の嗜好性を訓練する [54] 。
人工甘味料が太る説3:腸内細菌が乱れて太る
人工甘味料は、腸内細菌を乱して太るという説があります。
その根拠となるのが、下記の論文です。
参考:人工甘味料アセスルファムカリウムがCD-1マウスの腸内細菌叢と体重増加に影響を及ぼすこと(2017年7月)
人工甘味料は現代の食生活に広く使用されているが、ヒトの健康に対するその影響は一貫しておらず、有益な結果と有害な結果の両方が報告されている。
肥満と2型糖尿病は、過去20年間に米国やその他の国々で劇的に増加している。
数多くの研究により、体重のコントロールやグルコースの代謝および調節において腸内細菌が重要な役割を担っていることが示されている。
興味深いことに、人工甘味料のサッカリンは腸内細菌叢を変化させ、耐糖能異常を誘発する可能性があり、肥満と糖尿病の世界的流行に対する人工甘味料の貢献について疑問を投げかけている。
アセスルファムカリウム(Ace-K)はFDA(米国食品医薬品局)に認可された人工甘味料で、一般的に使用されているが、これまでに報告された毒性データは不十分であると考えられている。
特に、Ace-Kが腸内細菌叢に与える機能的な影響についてはほとんど分かっていない。
本研究では、Ace-Kの腸内細菌叢への影響および糞便中の代謝プロファイルの変化について検討した。
その結果、Ace-Kの摂取により、4週間の投与でCD-1マウスの腸内細菌叢が擾乱されることが判明した。
観察された体重増加、腸内細菌群集組成のシフト、エネルギー代謝に関連する機能性細菌遺伝子の濃縮、および糞便中のメタボローム変化は、雄と雌で差のある効果が観察され、性別に大きく依存した。
特に、Ace-Kは雄マウスの体重増加を促進したが、雌マウスの体重増加は促進しなかった。
この結果は、人工甘味料と腸内細菌叢の相互作用、およびこの相互作用が肥満とそれに伴う慢性炎症の発症に果たす役割の可能性について、新たな理解をもたらすと考えられる。
この論文では、人工甘味料のアセスルファムカリウムをマウスに摂取させたところ、腸内細菌に変化が起こり、オスのマウスで顕著に体重が増加したと報告しています。
その差はなんと約2倍!(10.28g vs 5.44g)
※メスのマウスでは、目立った体重増加は見られませんでした。
なぜ、これほどの差がつくのか?
それは、アセスルファムカリウムを投与したオスのマウスでは、
- エネルギー採取能力が向上した:腸内細菌のバクテロイデスとアネロスタイプが増加したことにより、エネルギー採取能力が向上した。
参考:人工甘味料アセスルファムカリウムがCD-1マウスの腸内細菌叢と体重増加に影響を及ぼすこと(2017年7月)
ことで肥満につながったようです。
腸内細菌のバクテロイデスとアネロスタイプが増えたことにより、エネルギー採取能力(カロリーを得る能力)が向上したとのこと。
腸内細菌の乱れは、肥満につながることがわかっています。
反対に腸内細菌が整えば痩せることができます。
腸活するとなぜ痩せることができるの? こんにちは、おっちーです(^^)腸活すると痩せるってよく聞きますよね? で、ネットで「腸活 ダイエット」って調べてみたのですが、、、残[…]
以上のことから、人工甘味料は腸内細菌を乱して太る可能性があります。
ただし、腸内細菌は多種多様。
100人いれば100通りの腸内細菌があります。
しかも上記の研究は人ではなくマウスであり、さらにメスのマウスは体重増加は見られなかったとのこと。
必ずしも全ての人において、人工甘味料が腸内環境を悪化させるわけではないということはおさえておいてください。
参考:非栄養性人工甘味料であるアスパルテームとスクラロースの健康成人における腸内細菌叢への影響。無作為化二重盲検クロスオーバー臨床試験の副次的成果(2020年11月)
よって、人工甘味料は腸内細菌を乱して太る説は、それなりに根拠があるものの絶対ではないということです。
以上、人工甘味料が太る説について考察してみました。
まとめると、
- ホルモンが作用して太るという説は根拠が弱い:人工甘味料でインスリンが出るのは確かだが、だからといってインスリンは肥満ホルモンではないため、ホルモンが作用して太るという根拠は弱い。
- 甘いものへの欲が高まって太る説は可能性がある:報酬系があまり刺激されず快楽ホルモンのドーパミンが得られず食事による満足感がない。そのため、満足感を得るために過食に走る可能性はある。
- 腸内細菌が乱れて太る説は可能性がある:動物研究では人工甘味料は腸内細菌を乱すことがわかっている。実際にオスのマウスでは腸内細菌のバランスが乱れたことでエネルギー採取能力が向上して体重増加につながった。ただし腸内細菌は十人十色のため全ての人にこれが当てはまるとは限らない。
です。
たしかに人工甘味料は太る可能性があるかも?といったところでしょうか。
実際に人工甘味料は太るのか?研究事例を見る
人工甘味料が太らない理由、太る理由の2つを見てきました。
たしかに太る説は無視できないところがあります。
では、実際に人工甘味料は太るのでしょうか?
2つの論文をを見比べて、僕なりに結論を導き出したいと思います。
人工甘味料は太らないとする論文
下記の論文では、人工甘味料は、砂糖入り食品(飲料含む)と比べて1日の総エネルギー摂取量が減少し、体重が減少していることを示しています。
参考:低エネルギー甘味料の摂取は、エネルギー摂取量と体重に影響を与えるか?ヒトおよび動物実験から得られた証拠のメタアナリシスを含む系統的レビュー(2016年3月)
人工甘味料は、エネルギー密度を下げることにより、エネルギー摂取量および体重を減少させると予想される。
90件の動物実験のうち62件では、人工甘味料の摂取は体重に影響を与えないか、または体重を減少させた。
ヒトを対象とした12件の前向きコホート研究では、人工甘味料の使用と肥満度との間に一貫した関連性がないことが報告されている。
短期無作為化対照試験(129件)のメタ分析では、自由食前の砂糖入り食品または飲料の摂取に対して人工甘味料の総エネルギー摂取量が減少し(-94 kcal、95% CI -122~-66)、水に対しては差がなかった(-2 kcal、95% CI -30~26)ことが示されている。
持続的(長期)介入無作為化対照試験(4週間から40カ月)のメタ分析では、人工甘味料の消費は砂糖に対して相対的に体重を減少させ(9つの比較;-1.35 kg、95%CI -2.28~-0.42 )、水に対して同様の相対的体重減少(3つの比較;-1.24 kg、95%CI -2.22~-0.26 )となることが示されている。
短期と長期(4週〜40ヶ月)の無作為化対照試験(ランダム化比較試験)を含むメタアナリシスで、人工甘味料は砂糖と比べて体重を減少させた(-1.24kg〜-1.35kg)とあります。
上記の論文はメタアナリシスであり、いくつもの研究をひとまとめにして精査し結論を導くものです。
さらに、メタアナリシスに含まれているのは無作為化対照試験(ランダム化比較試験)であり、その結果は非常に信憑性の高いものとなっています。
※無作為化対照試験(ランダム化比較試験)とは、研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分け(ランダム化)、効果を検証する試験です。根拠に基づく医療(EBM)において、このランダム化比較試験は根拠(エビデンス)の質がメタアナリシスの次に高いとされています。
この結果から、人工甘味料は砂糖に比べてカロリーの総摂取量が減ることで体重が減少することがわかります。
また、水と比較しても同様に体重減少しているのも注目すべき点です。
これだけを見ると人工甘味料は太らず、むしろ痩せることができそうです。
コホート研究でも肥満度との関連性はないとの記述となっています。
つまり、痩せるでもなく太るでもないということです。
※コホート研究とは、特定の要因に曝露した集団(人工甘味料を摂取している)と曝露していない集団(人工甘味料を摂取していない)を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率(体重増加の発生率)を比較することで、要因と疾病の関連を調べる観察研究のことです。
人工甘味料は太るとする論文
このメタアナリシスでは、人工甘味料を摂取した場合、体重が増加するとの結果となっています。
参考:非栄養性甘味料と心代謝系の健康:無作為化対照試験および前向きコホート研究の系統的レビューとメタ分析(2017年7月)
【背景】
アスパルテーム、スクラロースなどの人工甘味料は広く消費されているが、その長期的な健康への影響は不明である。
我々は、人工甘味料の日常的な摂取が長期的な心代謝系への悪影響と関連するかどうかを判断するために、前向き研究からのエビデンスを統合した。
【方法】
MEDLINE,Embase,Cochrane Library(創刊~2016年1月)で、人工甘味料に対する介入を評価した無作為化対照試験および成人・青年における人工甘味料の消費について報告した前向きコホート研究を検索した。
主要アウトカムは、体格指数(BMI)であった。
副次的アウトカムは、体重、肥満、その他の心代謝系エンドポイントであった。
【結果】
11,774件の引用から、7件の試験(参加者1,003人、追跡期間中央値6カ月)および30件のコホート研究(参加者405 907人、追跡期間中央値10年)が含まれた。
対象とした無作為化対照試験では、人工甘味料はBMIに有意な影響を及ぼさなかった(平均差-0.37kg/m2;95%信頼区間[CI] -1.10~0.36;I2 9%; 被験者242人)。
含まれるコホート研究において、人工甘味料の消費はBMIの緩やかな増加と関連していた(平均相関0.05、95%CI 0.03~0.06;I2 0%;256人参加)。
無作為化対照試験のデータでは、体組成の他の測定値に対する人工甘味料の一貫した効果は示されず、さらなる副次的アウトカムは報告されていない。
コホート研究において、人工甘味料の摂取は、体重およびウエスト周囲径の増加、ならびに肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、2型糖尿病および心血管イベントの高い発生率と関連していた。
【解釈】
無作為化対照試験からの証拠は、体重管理に対する人工甘味料の意図された利益を明確に支持しておらず、観察データは、人工甘味料の日常的な摂取がBMIおよび心代謝系リスクの増加と関連している可能性を示唆するものであった。
上記の論文はメタアナリシスであり、いくつもの研究をひとまとめにして精査し結論を導くもので、その結果は非常に信憑性の高いものとなっています。
「含まれるコホート研究において、人工甘味料の消費はBMIの緩やかな増加と関連していた」との記述があります。
これは、人工甘味料を摂取している集団と、人工甘味料を摂取していない集団を一定期間追跡し体重(BMI)を調べた結果、人工甘味料を摂取している集団は緩やかに体重が増加したという意味です。
コホート研究は、長期(3年〜13年)の結果が見えるためデータとして重要です。
しかし、「無作為化対照試験(ランダム化比較試験)では、人工甘味料はBMIに有意な影響を及ぼさなかった」とあります。
これは、人工甘味料で痩せることもなければ太ることもないという意味です。
僕の結論
上記の論文をまとめると、
- 2016年のメタアナリシスのランダム化比較試験:人工甘味料は太らない、むしろ痩せる
- 2016年のメタアナリシスのコホート研究:人工甘味料は痩せるでもなく太るでもない
- 2017年のメタアナリシスのランダム化比較試験:人工甘味料は痩せるでもなく太るでもない
- 2017年のメタアナリシスのコホート研究:人工甘味料は太る
となっています。
これらを眺めてみると、コホート研究では人工甘味料は太るようです。
コホート研究は、長期間追跡しているのでデータとして重要です。
しかし、コホート研究の欠点として、研究者が介入することができず観察のみであるということ。
食事や運動の内容は研究者によって厳密に管理されているのではなく、対象者へのアンケートでデータを取得します。
アンケートは正確性に欠くことがあります。
また、正確に人工甘味料の摂取量が把握できないため、コホート研究のデータの質はそこまで高くないです。
その点、ランダム化比較試験は研究者が介入しています。
データは対象者のアンケートといった脆弱なものではなく、研究者がしっかり記録し管理しています。
また、対象者を2つ以上のグループにランダムに割り付けるため、効果を公平に比較できるので、データの質は高いといえます。
実際、ランダム化比較試験はコホート研究よりもデータの質が高い(エビデンスレベルが高い)とされています。
ランダム化比較試験で見ると、人工甘味料で太る結果とはなっていませんでした。
さらに、2016年のメタアナリシスでは砂糖から人工甘味料に置き換えれば痩せることができる結果となっていました。
砂糖から人工甘味料に置き換えれば痩せることを支持するメタアナリシスは他にもあります。
参考:低カロリーおよびノーカロリー甘味飲料の変更または代替と心代謝系アウトカムの関係。前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタアナリシス(2022年8月)
また、専門家によるディスカッションでも人工甘味料は砂糖から置き換えればダイエットに効果アリとのコンセンサスが得られています。
参考:低カロリー甘味料に関する専門家のコンセンサス:事実、研究ギャップ、提案された行動(2020年6月)
・食品や飲料のエネルギー密度を下げるために砂糖に置き換えると、人工甘味料は正味のエネルギー摂取量を減らし、体重管理を助ける(3、5、12)。
・介入研究により、人工甘味料を含む飲料は、少なくとも水と同程度の食欲およびエネルギー摂取量に対する効果があることが示されている(5、32)。
砂糖はカロリーが高く、人工甘味料のカロリーはほぼゼロ。
ダイエットは、カロリーを抑えることができれば痩せられるのが基本。
ただ、
- 甘いものへの欲が高まって太る可能性はある
- 腸内細菌が乱れて太る可能性はある
のも事実。
以上のことから、
”人工甘味料は砂糖から置き換えれば太らない、それ以外は太る可能性あり”
との結論に至りました。
どうしても甘さが欲しいのなら、人工甘味料を頼るのはアリかと思います。
※しかし、最近では人工甘味料のリスクも見られるので慎重である必要はあります。詳しくは次回以降で解説します。
まとめ
最後にもう一度内容を確認しましょう。
- 人工甘味料が太らない理由は「①カロリーがほぼゼロ、②砂糖のように中毒や依存症にならず過食を防ぐ」があげられる
- 人工甘味料が太る説に「①ホルモンが作用して太る、②甘いものへの欲が高まって太る、③腸内細菌が乱れて太る」がある
- しかし、インスリンが分泌されたとしても太らないことから「①ホルモンが作用して太る」説は厳しい
- 人工甘味料は、報酬系が刺激されず満足感が得られないため過食に走る可能性があり「②甘いものへの欲が高まって太る」はありえる
- 人工甘味料は、バクテロイデスやアネロスタイプといった腸内細菌が増加することでエネルギー採取能力が向上することから「③腸内細菌が乱れて太る」可能性がある
- 人工甘味料は、コホート研究では太るとなっているが、エビデンスレベルの高いランダム化比較試験では太ることはなく、むしろ痩せた結果となっている
- 人工甘味料は「①カロリーがほぼゼロ、②砂糖のように中毒や依存症にならず過食を防ぐ」がことから、砂糖からの置き換えで人工甘味料を使用すれば太ることはない
- しかし、「②甘いものへの欲が高まり太る、③腸内細菌が乱れて太る」かもしれない
- このため砂糖からの置き換え以外は、砂糖の置き換えのメリットが得られず太る可能性がある
いかがでしたでしょうか?
人工甘味料は、砂糖からの置き換えであれば太ることはありません。
今回の記事で、人工甘味料が太るのか?太らないのか本当のところをご理解いただけたかと思います。
どうしても甘いものがやめられないのであれば人工甘味料を選択肢として入れるのはアリだと思います。
しかし、甘いものがやめられない人でなければ、あえて人工甘味料を摂る意味は全くありません。
むしろ、避けたほうが無難でしょう。
人工甘味料は安全だと思っていましたが、最近の論文を読んでみるとどうも雲行きが怪しくなっています。
次回以降、人工甘味料のリスクについて解説していきたいと思います。
今回のお話は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
それではまた♪